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 新型特養の「家賃」高いの?安いの?




全室個室で家庭的なケアを目指す新しいタイプの特別養護老人ホーム(新型特養)が増えています。厚生労働省の方針で、昨年4月から新型特養の入居者が「家賃」を払うことになりました。新設の特養は新型が原則です。家賃の現状はどうなっているのか。現場を訪ねました。

○ケアの質が理解のカギ

兵庫県尼崎市にある特養ホーム「けま喜楽苑(えん)」。鈴木トシさん(85)の個室には、亡き夫が描いた油絵3枚が飾ってある。「自宅には部屋いっぱいに飾ってあったんです」とほほ笑む。テラスには夫が好きだった花が並ぶ。使い込んだ鏡台、ベッド脇にはお気に入りの洋服がかかっている。

同苑は01年に開所した新型特養だ。55人の入居者は午前7時半から同10時まで好きな時間に朝食をとることができる。1人で入るヒノキ風呂。住むことを重視した環境は、4人部屋中心の従来型特養とは大きく違う。人気は高く、市外の150人を含め、約500人の入所待機者がいる。

入居者は昨春から、家賃の3万円を払っている。それに先立って、同苑は家族会を4回開き、開設時に3億円の借金をしたことや職員配置が手厚いこと、光熱水費が従来型の1.5倍以上になることなどを説明、「家賃なしでは3、4年で赤字になり、ケアの質が落ちる」と理解を求めた。

家族会は介護保険の仕組みについて苑側と勉強会をした。「生活が苦しい人はどうなる」など疑問の声も出た。苑は個人面談をし、家族を含めて負担が難しい数人については、独自に減免することを決めた。

家族会長の村上義徳さん(60)は「親の表情が家にいるときより、目に見えて明るくなった。ずっと住み続けてほしいと思った」と家賃徴収に応じた理由を説明する。

ホームを運営する尼崎老人福祉会の市川禮子理事長は「ケアの質が悪ければ、家賃請求は紛糾したと思う。負担に見合うサービスが求められている」と話す。

○平均は2万9000円

NPO法人「特養ホームを良くする市民の会」(東京都新宿区)は昨年10月、30都道府県の新型特養100施設を対象に家賃などに関するアンケートをし、94施設から回答を得た。それによると、家賃を徴収しているのは6割弱(53施設)。家賃は月3711円から5万7000円と幅があり、平均は約2万9千円だった。同会(03・3358・9093)は結果を報告書にまとめている。

ばらつきの理由の一つは補助金だ。新型特養では個室部分の建築補助はなくなり、原則家賃でまかなう。ただ、制度移行期のため、補助金を利用できた新型特養もあり、その分家賃は安くなる。独自に利子などを補助する自治体もあり、それも家賃に影響する。

利用者などの事情に配慮して、低く抑えるケースもある。昨年10月にオープンした静岡県大須賀町の「おおすか苑」の家賃は3万円だ。建築コストや光熱水費などを反映させると5万円台になるが、「入居希望者の半数が低所得者で、5万円の負担は重い。法人の判断で引き下げた」と同苑。町有地の無償貸与を受けるなど、町の支援が支えになっているという。

○減免制度の拡充が必要

滋賀県近江八幡市の「ふれあい」は昨年9月に開所した。「家賃を知って入所を辞退した人もいました」と加賀爪純子施設長。

家賃は5万円台。「従来型に比べ、補助金が大幅に減ったので、利用者に負担をお願いせざるを得ない」。ある80代女性の場合、収入は国民年金の月約3万円だ。介護保険の1割負担や食費を含めると、自己負担は月12万円程度になる。「援助する家族の負担は重い」と加賀爪さんは話す。

新型特養の家賃では、低所得者が入居している場合、施設の介護報酬が加算されるため、その分を家賃から差し引くことで月1、2万円の負担軽減になる。さらに施設が家賃を軽減した場合、一定割合を国や自治体が補填(ほてん)する制度もある。

市民の会の本間郁子代表は「家賃を払っても質の高いケアを受けたいという意識は確実に広がっている。新型特養を急いで普及させる必要があり、減免制度を拡充させるべきだ」と話す。

〈新型特養と家賃〉 厚労省は03年度の介護報酬改定で、新型特養については家賃を徴収する方針を決めた。新型特養は10人程度のユニットごとに共有するリビングがあるのが特徴。03年時点での利用者は特養入居者の0.6%。特養を新設する場合は新型特養が原則なので、15年には割合は30%以上になる見通しだ。

新型特養の家賃の内訳は、個室やリビングなどの建築費、備品費・修繕費、光熱水費など。従来型特養は建築費の2分の1を国、4分の1を都道府県が補助していた。

05年の介護保険制度見直しの焦点の一つが、家賃など施設入居者の自己負担引き上げだ。国の審議会などでは、在宅より施設のほうが負担が少ないため=図=、施設志向が変わらないなどとして、従来型も含め家賃の徴収範囲の拡大を求める意見が出ている。

(朝日新聞2004/03/17)



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